「中国の巨大な南北《水》モンダイ」2013/04/01

えー、いろんな問題が重なって来るのが、世界情報の面倒臭いところ。まァ「ヘラ鳥」が中国情報にコダワルのは当然だが。例えば、「南の水を北へ」送る壮大な計画。そして、最重要モンダイ、今後の世界の覇権の源となる「イノヴェーション能力」に関しての、アメリカと中国の比較。取り散らかったレポート、コラムを並べて、ご紹介致そう。

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「ヘラ鳥ウォッチング」

「CHINA'S MASSIVE WATER PROBLEM」(03/29)

「中国の巨大な南北《水》モンダイ」

スコット・ムーア(オクスフォード大・中国環境政治学)

ムズカシイ政治モンダイに直面してるのは確かだが、それよりも北京政府は国家の渇きを癒す記念碑的巨大技術に挑んでいる。

この3月、あのパナマ運河完成から100年後、中国は巨大な「南の水を北へ」計画の第1期を終えようとしている。これはソモソモ毛首席の提唱に発して居るのや。

中国は世界でも、水の最も豊富な国だ。しかし、毛首席の観察通り、その分布は圧倒的に南部と西部に集中し、急激な経済成長の結果、水の不足は危機的レヴェルに達している。1990年代、北部中国の大河、黄河は海へ抜けず、北京周辺、及び北部んの有力都市の地下水面(WATER TABLE) は、非常に低下し、現在の井戸では対応出来なかったのや。政府は水の備蓄と使用制限を推進した。しかし効果なく、飲用、灌漑用、水力発電用の水需要の増加に対応出来なかった。

そこで、政治的に水を配分するのではなく、増大する北部の渇きを癒す、記念碑的工事に踏み切ったワケだ。南から北への水移送は、毎年、45立法キロメートルの水を、東、中央、西部中国へ3本のルートを通じて運ぶと言うもの。どのルートも巨大な技術的挑戦。東、中央ルートは、黄河に依拠するが、西部ルートは、ヒマラヤ山脈からの水。

その推定費用650億ドル、と言うのは、どう考えても低すぎる。しかも社会的環境的対応を含んでいないのや。建設工事で、既に数十万人が居住土地を追われているし、水の移送による病気の増加もチャンと研究されていない。北京政府の計算は政治的なものに尽きる。限りある水を、競合するさまざまな需要に分配するよりも、いかにコストが掛かろうと、水源量を増やす方がカンタンだと考えたわけだ。

統治構造の脆弱な独裁政権として、この対応は仕方ないだろう。しかしこのモンダイは、中国の経済的、環境的未来のリスクとなるんちゃうか。政府は増加する水需要に無制限な供給を実行するわけには行かない。

既に、北部に給水している南部自体に水不足が起こっているのやねん。長期的には、ヒマラヤの温暖化によって、中国の主要河川の流量が減り、全国的な水不足を来すだろう。

さらなる奇蹟的技術をもってしても、根本的水不足は解決出来まい。慎重な水の再分配が必要になる。中でも、農民への給水の劇的なコスト上昇は、共産党のアキレス腱やんか。
結局、中国は水不足に対処する重大な政治改革が必要になる。法制度の強化も不可欠だ。アメリカを始めとする世界各国は、中国が政治改革をを通じて、発展を維持できるように支援せねばよ。さもないと中国の経済と社会不安定が危機に瀕する。

パナマ運河の設計者は、2ツの大洋の不便な分離を、巨大な技術力で克服した。しかし、中国の水不足モンダイを解決するのはカンタンなことではない。ドラマチックな改革抜きでは、共産党は高い場所で乾き切るっきゃないぜ。

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ウム。一国の運命を左右するのは「治水」だと、ムカシから言われて居るやんか。世界の次ぎなる覇権を狙う中国としては、ノッピキならぬ事態。これは国内の南北水モンダイだが、その他にも、東南アジア各国との川をめぐるイザコザも多発している。

どんな巨大プロジェクトでもコナせる経済力が逆に仇になる、という展開も想像される。
このコラムの筆者は、オクスフォード大学の、中国の環境政治研究者。

「アメリカは革新的か?中国と較べて」2013/04/02

えー、今や「イノヴェーション」が魔法ノコトバ。ベテラン・コラムニスト、フリードマンの最近のタイトル「NEED A JOB? INVENT IT」「就職したい?ならばシゴトを作り出せばイイじゃんか」よーするに、いわゆる就職活動なんてのは20世紀のハナシ。「学歴」なんざ役立たず。「イノヴェーション力」の時代やねん。学校出たって、ハンパな能力で高給求めるのはムリ。高能力イコール高給の時代。その取捨選択は速い。手本はフィンランド。学生はイノヴェーション対応の高校卒。コンセプトとクリエイテイヴィティを習得して選択の幅を広げる。通学期間は短く、宿題もテストも殆ど無い。こうした対応が出来るアメリカの学校は、オリン・カレッジ、MITのメデイア・ラボ、スタンフォードの「D-スクール」位だ。では、アメリカはイノヴェイティヴか?中国と比べてどうか?

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「AMERICA THE INNOVATIVE?」(04/01)

「アメリカは革新的か?中国と較べて」 イーモン・シングルトン

(ダブリン・発)

アメリカ議会は言い争いばかり、失業率は高く、インフラはボロボロ、でもアメリカの政治的見方としては、少なくとも高いテクノロジーと意志によって世界をリードしている、と言う考えで自らを慰めて居るのやねん。

さよ、オメデタイ、都合のイイ考えだ。中国はアメリカを追い抜けない、クリエイティヴが不足しているから。中国は独裁国だ。デモクラシーこそイノヴェーションの中心だ、と言うのがアメリカの自慰シナリオやねん。アメリカは技術的革新の大部分を占め、この近代世界を形成していると見做されているが、政治的自由が革新の基本的条件だと考えている人々にとってアテ外れなのが、広汎な歴史的証拠だ。

古代世界の最もクリエイティヴな社会の中に、自由な社会は殆ど無い。メソポタミアもエジプトもそうだ。近代初期ヨーロッパの華々しいクリエイティヴィティも、血も凍るような努力によって、なんとか花開いたのやねん。さらに最近では、ドイツのナチも、ソ連も、独裁ブンカによって、能力以上の革新を遂げたのや。

アメリカの歴史からの証拠も「必要なのは自由だ」と言うハナシを弱める。確かにアメリカは最初から、自由が国家の政治ブンカの中心だったけれど、常にリーダー的位置を占めてていたわけではない。アメリカの技術的成熟は、極めて最近のことやねん。

IBMの元研究所長、ラルフ・ゴモリーは、オレのインタヴューに、こう答えた。アメリカは1930年頃までは、他国の技術に触発された継承者、つまり最近の日本や東アジア各国に似た役割だった。

では、20世紀中期のアメリカの突然の技術力上昇を、どう説明するか?それは「自由」なんかではなく、ズバリ「カネ」なのや。第二次世界大戦で、アメリカ政府は、R&D(研究・開発)のために各企業に惜しみなくカネを注ぎ込んだ。そして冷戦。1957年ソ連のスプートニク成功で、政府のカネによる研究に更に拍車が掛かったのや。その結果のヒトツがDARPA(国防高等研究計画局)で、ここからインタネットが開発された。

歴史的に、富裕国は未来を先取りする。その国の企業が、実験屋と想像屋に、一番進化した材料と器具と知識を供給する。ここから画期的な質問が出て来る。中国はカネモチになったが、世界一番の革新国家としてアメリカを追い越すのか?この質問は適切やねん。アメリカの革新セイシンは、もはやダレ気味。シリコン・ヴァレー・ヴェンチャーのシホン家、ピーター・シールがオレのインタヴューに答えたところによれば、この数十年のアメリカの革新(イノヴェーション)は間口が極めてセマくなっている。「情報技術と金融技術に限られている」「対照的に例えば、輸送に関しては40年前から進歩が無い。ガン治療と似たようなもんだ」

ワシントンに本拠を置くITとイノヴェーション・ファンドの社長、ロブ・アトキンソンは指摘する。「中国は急激に研究費用を増やして居り、研究に多量の資源を投入する能力を持っている」ある情報によれば、中国の開発研究費は、2000年のGDPの0.9%から2009年にはGDPの1.7%に増えている。その間、中国のR&D研究者数は2倍以上になっているのや。その期間に、アメリカのR&D研究者数は10%しか増えていないのだ。一説によれば、2023年までには、中国のR&D費用は、アメリカのそれを追い抜くと。

一方、国際的特許申請は、ドンドン低下しているように見える。世界知的財産組織のデータによれば、2011年度、世界で最もモウケた国際特許は、中国の代表的テレコム企業ZTEのもの。その特許数は、なんと2009年から5倍になっている。同じ中国企業、HUAWEI が第3位を占め、アメリカ企業は10位の QUALCOMM のみ。

困ったことに、アメリカの特許法は今や根本的に弱体化しているのや。アメリカ議会は小さな発明者の知的財産権を、特許権侵害や盗取から守り難くなっている。

もうヒトツのモンダイは、アメリカ企業が、自分のR&D操作を海外に移すことだ。2009年には、アメリカ国内の多国籍企業の開発研究部門従業員の27%が海外に居てはるのや。2004年には16%だったのに。この傾向は中国には有利に働く。

インテル社とアプライド・マテリアル社も、主要な研究施設を中国で展開している。特許法の権威、ポール・ミッシェルに依れば、2社とも、その研究施設規模はアメリカ国内よりも大きいと言う。彼によれば「こうした施設のスタッフの殆どは中国人で、その結果としての製造労働は中国で行なわれる」

しかし、東アジア文化が技術的創造性の重大な障害にならないのなら(インテル社もアプライド・マテリアル社も、それを考慮しなかったらしいが)なぜ、東アジアの科学者や技術者が概して能力の低い類型を示すのか?その答えの一端、其処には違った種類の技術的創造性があるからだ。

基本的な発見は大きな記事となって、ノーベル賞を取る。しかし、その発見を利用して経済的な手ごろな製品を造るのはごく日常的なシゴトなのや。東アジアの企業は、この第2次的シゴトに焦点を合わせる。彼らの製造技術に関する「一連の改善」は滅多に新聞記事にはならないが、その成功はこの60年間、この地域の富裕化の引き金になって居るのやねん。

中国人の技術的創造性を研究している英国人教授、ジェームズ・ウィルダンは、中国の科学の業績とスポーツの業績は平行的だと言う。1988年のソウル五輪では金メダル獲得数が11位だった中国が、20年後、2008年の北京五輪では1位になった。

「スポーツで1位を達成した中国なら、科学とイノヴェーションでも直ぐにリーダーになるんちゃうか?」

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ウム。イササカ眉唾な結論だが、万事、中国のノシ上がりが眼に付く今日このごろだ。「技術的革新」でも数量的にアメリカを上回る日が、やがて来るのやろ。

因みに、このコラムの筆者フィングルトンは、「龍の口の中で:中国が覇権を握る時代に於けるアメリカの運命」の著者。

フリードマンのコラムに紹介された、スタンフォード大学の「D-スクール」とは、様々な専攻の学生たちが、互いに議論しながら、クリエイテイヴィテイを高めるのに成功しているデザイン(DESIGN)教育部門。

「北京当局批判してクビ?芯ある編集者」2013/04/03

えー、なんとなく中国当局の言論へのシメツケに穴が開いて来たように見える。当局としては一応制裁を加えるが、ドコトナク、ホンキではないような雰囲気が感じられる。北京政府批判記事を書いてポスト失った編集者に関するレポートと、真正面から中国政府の「歴史の傷隠し」批判するコラムと、2本、ご紹介致す。

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「ヘラ鳥ウォッチング」

「JOURNALIST CRITICAL OF BEIJING NOW OUT OF A JOB」(04/02)

「北京当局批判してクビ?芯ある編集者」 ジェーン・パーレッツ

(北京・発)

影響力のある共産党機関誌の著名な編集者が月曜日(04/01)、中国は北朝鮮を見限るべきだ、と英国の新聞に書いたために、職を追われた、と語った。

編集者、DENG YUWENは、韓国紙、CHOSUN ILBO(朝鮮日報)に、自分がフィナンシャル・タイムズに書いた記事についての非難を、中国外相が共産党中央党校に電話したと語った。その記事と言うのは、中国の北朝鮮との同盟カンケイは「時代オクレ」であり、勝手な行動をする北朝鮮はもはや、アメリカの影響力に対する緩衝としても役に立たないと論じ、ひとたび核兵器を持ったからには、北朝鮮政府はそれを 中国に向けて使用することだって出来るではないか、と書いたのや。

DENG は、共産党中央党校の週刊誌「STUDY TIMES」の副編集長として記事を書いて居る。DENG のジャーナリズム内の位置からして、この記事はアメリカやヨーロッパの注目を集め、習の率いる新政府が、3度目の核実験の後、北朝鮮にウンザリして支援を修正するのでは、と言う推測が広がったのや。

DENG は、こう言ったと伝えられる。「あの記事のためにワタシは編集者から外され、宙ブラリンの位置に居る。給料は貰っているけど。他の部署に移されるのかどうかワカラナイ」と。

中国は国連の課した北朝鮮への新しい制裁を支援して居るが、どの位ホンキなのか分からない。2週間前、アメリカの高官3人が北京を訪れ、中国に制裁の強化を求め、北朝鮮の貿易銀行とのビジネスを廃めるよう要請した。しかし制裁強化に関して特別の協定の発表も無いまま、アメリカ高官たちは、北京を去ったのやねん。

「フィナンシャル・タイムズ」に書いたDENGの記事は、国連の制裁については触れていない。しかし、中国の北朝鮮、とりわけ金正恩支援政策については、激しく批判しているのや。「核武装した北朝鮮は、もし北京政府がその要求に応えないなら、アメリカが好意を見せると言う可能性も大いにある」とDENG は書いた。

北朝鮮は中国とのカンケイを、米国との朝鮮戦争で戦い死んだ中国兵士の「鮮血で固めた友誼」と同じレンズを通して見ることは無い、と論じる。「北朝鮮は、その隣人に対してそうした感情など全く持っていない」と。

そして、北朝鮮に経済の大改革を強いる中国政策に対して「ひとたび、改革の扉が開けば、政権は転覆するだろう。遅かれ早かれ崩壊に直面するような国と政権に対して、なぜ中国はカンケイを維持しなければならないのか?」とも書いた。

「STUDY TIMES」で働いていた間に、DENG は、伝統に縛られない闘争的コメンテーターとしての評判を得ていた。昨年には、胡首席や温首相の失敗について書き、彼らは、政権に在った10年の間に、必要な改革を行なうチャンスを浪費した、と批判したのや。

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ウム。こうした中央に近い内部のコメンテーターが、「粛清」されることなく、批判記事を書き続けていた、ということ自体、中国の政治体質の変化、軟化とちゃうか?

しかし、中国のオジャマムシ、北朝鮮を切れ、というコメントは、中国にとってマットーなサジェストやんか。

こうした歯に衣着せぬコメンテーターの利用法は、ゴッツ大事なことやで。その辺、習サンは、こうしたジャーナリストを、どう扱うのか、見ものやんか。

「国家主導の全国民記憶喪失症について」2013/04/06

えー、このコラムの筆者は、今、中国で人気の作家。その人気を利用して?かなり諷刺的な作品も書いているらしいが、ギリギリの線を上手く辿って、当局とのカケヒキの線上で自分の主張を通し、きわめて直截な発言をする。興味をソソラレるコラム。ご紹介致す。

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「ヘラ鳥ウオッチング」

「ON CHINA'S STATE-SPONSORED AMNESIA」(04/02)

「国家主導の全国民記憶喪失症について」

Yan Lianke(閻連科・1958~)

(北京・発)

2012年3月、オレはスェーデンの中国語・中国文化教授、トルビヨン・ローデン氏に香港で会った。その時の彼のハナシ。香港市立大学で短期的に教えていたクラスで、中国本土からの学生40人に訊いたと言う。1989年6月4日、流血で終わったデモクラシー運動事件を知っているか、当時の有力なデモクラシー擁護者、LIU BINYAN、(劉賓雁) FANG LIZHI(方励之)の名前を知っているかと。中国からの学生は全員、お互い顔を見回し合いながら、黙り込み、当惑顔だった、と。

それでオレは、ある女教師がオレに話したことを想い出した。彼女も中国からの学生に、1960年代中頃、「3年間の自然大災害」で3000万から4000万のニンゲンが餓死したことを聞いたことがあるか、と訊ねた。学生たちは呆然と押し黙り、まるで彼女、つまり香港の教師が、自分たちの母国を攻撃するために、厚かましくも歴史をデッチ上げてるかのような反応を見せたと言うのや。

このハナシを突き合わせながら、ローデン氏とオレは、静かなヴェトナムのカフェで、コトバも無く座り込んだままだった。それ以来、中国の国家レヴェルの記憶喪失がオレのココロにトゲとして刺さったままなのだ。

20才から30才の世代は健忘症に罹っているのか?ダレが彼らを「忘れさせた」のか?どう言う方法で?昔をよく覚えていてるオレたち年長世代は、若い世代の健忘症にセキニンあるんちゃうか?オレが言う健忘症とは、自然に忘れることではなく、記憶を削除する行為のことやねん。中国では、記憶削除が若い世代を記憶自動装置に向かわせる。歴史の記憶と現在、昨日と今日、スベテがこの画一的削除過程を経て、跡形も無く失われる。

オレは信じて来た、歴史と記憶は常に、一時的な精神異常を克服して、あるべき位置に戻るものだと。しかし今、その逆がホントらしい。現在の中国では、記憶喪失が記憶に勝つ。ウソが真実を上回る。作り事が歴史の割れ目を埋める。

1949年から、革命が完全に中国を巻き込んだ。その革命が政権を創り、歴史を創り、ワレワレの現在を創ったのや。人々の記憶と管理された記憶、人々の忘却と管理された忘却、これらはスベテ国家が取り決め、革命戦術によってスッカリ変形されたのだ。

歴史的細部は恣意的に記録や教科書から削られた。老齢の中国人の記憶の中に生きている事件の細部、1910年代、20年代の群雄割拠、1930年代に始まった、対日本戦争で血を流した兵士や市民達の名前、これらスベテが慎重に仕分けされたのやねん。

内戦が1949年に終わったあと、一人の男の情熱が国家全体を熱狂的なペースの建設に向かわせた。次々と起こった政治運動が戦時態勢の熱狂的雰囲気を持続させた。しかし、この運動に付随した悲劇的経験は、人々の集合的記憶から削除され、永久的に隠蔽されたのや。

大躍進政策、製鉄のための全国的な裏庭溶鉱炉の強制的建設、その結果としての3000~4000万人の餓死。これは後に「3年間の自然災害」などと非難される、10年間の文化革命の大災害だったのだが、人々にとって、こんなことを詳しく話すのは、あまりにバカバカしく、あまりに残酷で、あまりに不愉快だった。だから人々は、その悲痛な記憶を若い世代に伝えたくなかったのだよ。

如何に多くの中国人、ヴェトナム人が、1970年代のアホらしいヴェトナム戦争で死んだか、一言も書かれていないじゃんか。1983年の、人前でキスしただけでワイセツと咎められて刑務所にブチ込まれたり、貧困からのコソドロが死刑にされたり、と言う犯罪への弾圧的取り締まりについても、何の問いかけも無いじゃんか。

全世界が、あの1989年6月4日の学生運動の悲惨な結末を覚えているのに、その痛ましい記憶は、中国の経済的発展と国家の影響力増強の中に、忘れ去られている。

その他、記憶から消されているものは?最近にもイロイロあるじゃんか。売血から引き起こされたエイズ蔓延。不法な炭鉱での無数の爆発。不法レンガ焼き工場でのドレイ労働。有毒粉ミルク。有毒タマゴ。有毒海産物。キケンな再生食用油。発ガン性野菜と果物。強制堕胎。暴力的破壊。請願者への虐待・・・挙げればキリがない。

国家や政府にとってマイナスなものは、アっという間に国民の集合記憶から抹消される。抹消は、新聞、雑誌、TVニュース、インタネット、その記憶保持するものスベテへの検閲によって行なわれる。この中国の記憶喪失は個人に影響を与えるだけではない。国家としての中国に影響する。ある人々は言う「過ぎたことは仕方ない、未来だけを見よう」これは個人にとっては多分、気休めさ。だが、国民全体が記憶を失うことは、気休めどころでは無かんべ。また「前を見つめなければ、明るい未来は来ない」と言うヤカラも居てはる。でも、記憶を削除された人々が建設的になれるわけがない。

この国家管理による記憶喪失は、動物王国のナワバリ防禦ソックリや。つまり生き延びるため。この記憶喪失を達成させる一番の方法は、国家のチカラを利用して人々のココロに枷を掛け、スベテの記憶チャンネルをブロックすること、教科書の中味を操作し、文学、芸術、その他スベテの表現を制御する政策にあるのや。

コトバや思想の抑圧は、よくあることだ。世界中の独裁政権がイロイロ実行して来たことやんか。抑圧下では、チャンとした記憶を保持している知識人たちも、国家管理による記憶喪失で黙り込む。するとミンナ黙り込む。国家は、国民の知識を幼稚園並みのレヴェルに抑え込み、国民を指示に従わせたいと考える、児童が教師の指示に従うのとソックリにだ。食べろと言われれば食べ、眠れと言われれば眠る。オトナの書いた台本を夢中で演じるコドモ。記憶を持っている人々の脳は改変されねばならず、コトバを持った人々の声は沈黙させねばならない。若い世代の記憶が「汚染」されないように。

こうして「清浄な」ワカモノの脳は、国家の絵筆によって白紙化する。そして国家の思い通りの新しい歴史と新しいイメージが描き込まれるわけさ。

当然、過去にナニが起こったのか知るチャンスを奪われた無垢な子供たちは、作り物の歴史を受け入れ、過去の知識に栄養失調状態のまま成長する。時が移るとともに、国家の絶対的パワーにより管理された記憶喪失が勝利することになるのや。

30年前、国家管理の記憶喪失に反抗する人々に対する手段は、綱と鎖だった。中国の経済が成長し、巨大な量のカネが自由に使えるようになった今は、そのカネを巧みに金融刺激として利用し、反抗者が自分の記憶をアキラめ、国家と妥協するようにソソノカすのだよ。この国では今や、カネがオールマイティで、人々の唇を封印し、物書きのペンを乾かしてしまう。そして、文字通りイマジネーションを真実と良心とは逆の方向に飛ばしてしまうのだ。

作家だろうと、歴史家だろうと、社会科学者だろうと、カンケイ無い。見てもイイものだけを見、見てはイケナイものを見ないことに同意すれば、勢力と名声とカネがアテガワれるのや。よーするに、ワレワレの記憶喪失は国家が提供するスポーツなのや。

文学や芸術や報道や文化の分野での、ほとんどの賞は、国家の認める限界内で管理されている。だからワレワレは、忘れ去られた過去の真実を、フィクションとスバラシイ嘘に置き換えるのだよ。それを道徳的罪悪感ナシでやる。ゲージツ的クリエイチビチーの名の下に。

その結果、真実は埋め込まれ、良心は去勢され、コトバは権力とカネに強姦される。ウソと無意味なコトバが政府の公式言語となり、教師によって教えられ、ゲージツとブンガクの世界に受け入れられるのやねん。

こう言ったコトバが、一般人の生活の中にも潜り込む。中国では今、2ツの言語システムが戦っている。ヒトツは国家に属するコトバ。もうヒトツは一般人のコトバ。なぜ一般人は政府に「ニンゲンのコトバを喋れ」「ニンゲンらしくやれ」とシツコク要求するのか?これは、当局が管理する記憶の公式ヴァージョンへの、人々の抵抗の反映なのやねん。

今の中国の記憶喪失について非難されるべきプレーヤーは国家だけではない。強制的記憶喪失に満足しているように見える中国の知識人たちにも眼を向けるべきだ。中国の知識人と、時代の異なる他の国のワレワレの仲間との間には、完全なチガイが在る。例えば以前のソ連の作家は、極端な独裁テロとキビシイ検閲にも拘らず、数々の傑作をものしているじゃんか。ミハイル・ブルガーコフの「巨匠とマルタリータ」、アレクサンドル・ソルジェニーツィンの「収容所列島」、ボリス・パステルナークの「ドクトル・ジバゴ」など。これらの作品は、国家権力への反逆だけではない。もっと深い、国の記憶の保持と回復なのだよ。

現在の中国は、もはや数十年ムカシの密閉された国ではない。経済の窓は世界に向かって広く開かれている。しかし、もうヒトツの政治の窓は、まだ固く閉ざされている。それは国家が権力支配に縋り付いているからや。そして国家管理の記憶喪失の秘密が、2ツの窓の異なる条件の間に横たわっているのだ。国家の意志は2ツの窓と、人々の書くものに警戒の眼を注いでいるが、人々が、国家の意志に警戒の眼を注ぐことは許されていない。

国家管理による記憶喪失の受け入れは、国家権力をなだめる物書きの間では、暗黙の了解となっているのやねん。賢いニンゲンの妥協なのさ。結局1ツの窓は開け放たれた。光が射し込み、ワレワレの世界は以前より明るくなった。こうした世界の一部では、記憶を保持し、記憶喪失を防ぐのに、法律なんか役立たずだ。ワレワレは、言論の自由も情報の自由も出版の自由も、過去の出来事を想い出す権利も護れないのだから。

さよ、どの幼稚園にも、ナニナニをしろと命令されるのがキライなイタズラっ子が必ず居る。同じように、記憶喪失を管理されるのを拒否する人々が居るのや。彼らは常に自分のコトバで喋ろうとし、公式的記憶の枠を越えて飛ぶために、創造の翼を広げる。良心に従ってドコへでも飛ぶ。過去でも現在でも未来でも。自分たちの記憶を若い世代に届けるために。もちろん、一篇のゲージツやブンガク作品は、ワレワレの記憶を運ぶかどうかだけで、作品の価値が決まるわけではない。でも、記憶が保持されているかどうかが、国家の偉大さ、成熟さ、寛容さを計るパラメーターなのだ。

中国が経済の窓を開いてから30年以上経った。30年前よりズっと繁栄して強くなったが、オレは中国が過去を思い返し、反省するところまで成熟しなけりゃと想うのやねん。中国の作家、故・巴金は、自分が迫害された記憶を保持するために、文化革命に狂信的に追従した中国の博物館を建てる夢を抱いていた。1960年代70年代に行なわれた「革命」は、この国をキチガイ館にしたのや。

巴金の夢を実現するために、オレはいつの日か、この国の痛ましい20世紀の記憶のスベテを刻んだ記憶喪失の記念碑を、天安門広場に建てたいと思っている。

オレは、真に偉大な国民は、自分の過去を思い返す勇気を持った国民だと信じる。そして真に偉大な国家は、自分の歴史をチャンと記録する勇気を持った国家だと。

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ウム。当然ながら、かなりコーフンした筆致。作家としては、あまりイイ文章ではないなァと感じつつも、その勢いにツラレて、ほとんどベタ訳してしまったやんか。でも考えてみれば、このコラムは長い中国語エッセイの英抄訳で、テニオハの無い中国語からの翻訳は、得てしてコトバが重複し易く、シツコイ感じが強まるのかもね。

カンタンに言ってしまえば、毛沢東の大失政による巨大餓死、天安門事件、その後現在にツナガル失点スベテを、強制的「記憶喪失」扱いにしている現政府への檄文。

中国の反体制作家だけでなく、ロシアの反体制作家の名前も並べて、危険を冒そうとしない現代中国作家のコシヌケぶりを突く。こうした当局に対するマッ正面からの批判が、どのくらいアブナイ橋渡りなのか、ワメには想像もつかないが。

さて、習サン、このマットーな批判、ドースルドースル?

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因みに、名前の挙がった中国の反体制人物についてのカンタンなキャリアを。

Liu Binyan(劉賓雁・1925~2005)作家。

1951年、北京で共産主義青年団機関紙「中国青年報」の記者となり、官僚や党幹部の腐敗を批判するレポートを書いて国の内外ん大きな反響を呼ぶ。1957年、「右派分子」として創作活動を停止される。文化革命中は「ブルジョワ民主化の代表人物」として執筆活動を禁止される。


Fang Lizhi(方励之・1936~2012)天文学者で民主化運動家。

1952年北京大学物理系学科に入学。56年、政権批判が比較的自由に行なわれた「百家争鳴運動」に共鳴。「科学と民主主義精神」の不足を訴える手紙を共産党に出す。直後「反右派闘争」で党員除名となる。文化革命時、1年ほど投獄される。1986年12月、トウ小平によって共産党から除名される。1989年の6月4日、天安門動乱の首謀者として拘束されかかるも、アメリカ大使館に保護を求め、1990年家族とともにイギリスに亡命。アリゾナ大学教授となる。

「タンマ期間を有効に使い損なった世界」2013/04/08

えー、中国は北朝鮮の扱い方をアチコチからヤイノヤイノ言われて困ってるし、アメリカは、CIAが軍隊代わりの無人機ドローンによるアルカイダ要人殺しで、新しいカタチの戦争に入って、モラルを問われている。日本もフクシマの「掘っ立て小屋」の放射能水の漏出を容赦なく指摘されている。世界は今、シッチャカメッチャカのド真ん中やねん。こうしたことスベテに対処すべきだった5年間の世界の無為無策を、フリードマン氏が抉っている。

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「ヘラ鳥ウォッチング」

「HOW WE'VE WASTED OUR TIMEOUT」(04/08)

「タンマ期間を有効に使い損なった世界」 トーマス・L・フリードマン

この5年間、世界は大きな紛争からタンマしていた。でも、そのタンマも時間切れになりそうだ。ロシアと中国は、アメリカより無責任やんか。アメリカも近視眼症だったけど、彼らは有害だったんちゃうか。

さよ、危機はほっとけばオソロシイことになる、ってのはホントだ。でも、「タンマ」もムダにしたらオソロシイことになるのや。世界をツラツラおもんみるに、オレたちゃまさに、その失敗をしたんちゃうか。オレたちゃ地勢学、つまり世界の葛藤の5年間のタンマ期間をムダにしてしまったのや。もし、アメリカが眼を覚まして行動しなければ、そして中国、ロシア、ヨーロッパも行動しなければ、オレたちゃみんな、ヒドク後悔することになるべな。

考えても見ろや。2008年の大不況以来、オレたちゃ何とかまァまァの暮らしをしてるやんか。アメリカ、ヨーロッパ、そして世界の他の大国も、なんとか経済回復して来た。オレたちの脆弱な経済回復をオジャンにし、過大な防衛費の掛かるような大きな戦争や世界をガタガタにするような紛争に苦しむことなく。言ってみれば、この5年間は、地勢学のタンマ期間だったのやねん。

しかし今、見回せば、いろんなヤカラがレッド・ラインを踏んで立ちはだかっている。ラインを今にも踏み越しそうなムズムズした顔で。北朝鮮のガキ大将、独リヨガリの金正恩は、アメリカと韓国に向けてロケット発射の準備を命じた。そこで韓国も、レッド・ラインのコチラ側に踏み留まるべきか、自前の核爆弾を造ってはイケナイのか、と大声で叫び始めているのやねん。

イランも自前の核爆弾とミサイルに近付いていて、今のところ制裁措置にメゲている様子は無い。一方エジプトは、国民にパンを与えるカネも枯渇して、国家破産のレッド・ラインに達して居り、周囲の状況を不安定化している。同じように、シリアの気違いリーダー、アサドも「支配か滅亡か」の選択セマられて、テメエの国の滅亡を選んだが、ジハード軍が混乱に乗じて化学兵器とミサイルを掻っ払うオソレがある。

そして最後に、自分が金融支援を受けたユーロ圏各国がキプロスを金融支援しなければならないと言う状況。いったいEUは、後どのくらいバンド・エイドを用意してるのかよ。
こうしたレッド・ラインのどれかヒトツが踏み越された時、オレたちゃ後悔することになるべな、この5年間で、テメエの経済をもっと回復出来なかったことを。さよ、スポーツの世界でのタンマ、つまりタイムアウトは、呼吸を整え、ゲームに勝つための作戦を立て直し、それを実行するためのものやんか。

将来の歴史家は、訝るに違いない。アメリカがなぜ、安いカネでテメエの国を向上させる短期のインフラ投資に同意出来なかったのか、長期的な税制改革と財政カットとともに。そうすれば、どんな地勢学的な嵐にも耐え得る頑強なバランス・シートがつくれたはずなのに。オレたちゃ今、バンパーとスペア・タイヤ無しで走り回っているのやねん。まさに世界が「暴力的衝突ゲーム」に突っ込もうとしている時に。

将来の歴史家は、中国にも訊くやろ。アンタはナニを考えて居たのや?アメリカに都合ワルイことが、必ずしも中国に都合イイとは限らないことに気付かなかったのかや?それが韓国、日本、ヴェトナム、台湾が核兵器を持つことになる可能性に。中国は北朝鮮への食糧と燃料を支配している。その両方を切って国境を避難民に開けば、何時だってあのバカ気たショーを止めさせることが出来るじゃんか。さよ、中国は核を持って合併した南北朝鮮と避難民の流入を怖がってるのかも。しかし、アメリカは、核ナシで合併した朝鮮を支援出来るし、避難民にも対処出来るのや。

そしてロシア大統領、プーチンが居てはる。3塁上に生まれたのに、テメエが3塁打を打ったと勘違いしてるご仁やねん。それは豊かな石油とガスのお陰やんか。アサドをシリアから除去するのを拒み、最悪の場合、シリアを第2のアフガニスタンにするつもりかや。イランの隠れた核計画を大目に見ることがアメリカを困らせると思ってんのか?核武装したイランのイスラム政権が、国境付近に出入りしないと信じてんのか?どう見ても、ロシアと中国はアメリカより無責任やんけ。アメリカはテメエをもっと強化しなければならないのに、それが出来ていない。近視眼的なのや。ロシアと中国はロコツに有害なのや。しかし結局、アメリカはある日、この5年間のタンマを、世界地勢学的伝染病から逃れるために、もっと上手に使ったら良かったのにと振り返ることになるんちゃうか。オレは将来の歴史家が、この5年間、アメリカは運が良かったなどと言って欲しくない。良くなかったのだから。